不思議な要衝の店 いって茶寮 

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不思議な要衝の店 いって茶寮

  ここに「いって茶寮」があるって知らなかった

 天理本通りに「いって茶寮」なる店がある。
 そう聞いて、養徳社を後にした。

 本部の方へ歩き出したが、さてどんなお店だろ?と記憶をたどる
 もう何十年も本通りを歩いてきたが、
 本通りに和菓子店があったかな?しかも、本部に近い方に

 店の前に来て理解した。

 気づいていなかった(申し訳ないけど、気に留めてなかったに違いない)

  本通りに本格的な和菓子があったなんて

お店は通りに面して全面ガラス張り、入り口は広く開放されている
でも、店頭にたくさんの商品が陳列されているわけでもなし
本通りには珍しいタイプかもしれない

 季節に合わせた「練り切り」が、入ってすぐのところに並べられている
 梅のお茶と共に、それを出してもらった

 やさしい甘さが口に広がる。
 この甘さが、和菓子なのか。
 元来、甘いものが苦手な自分が美味しいと感じる
 雑味のない甘みが口に広がる

  純粋な和三盆を味わえる「かんろ糖」

続いて「かんろ糖」というお干菓子が目に入った
本場の和三盆を特製の型にいれて作られたものだ
六角形にひらがなで「てんり」と書かれたものを中心に
色とりどりの花がそれを囲み、四角い形が四隅をおさえている
「八町四方は神のやかた」をテーマにしているとのこと

一つを口に運んで驚いた
淡雪のように溶けていく
その甘みは久しく味わっていないものだった
これが和三盆というやつか

 干菓子を検索してみて驚いた
 上等の箱に大切に入れられた写真と値段をみたからだ
 本格的な和菓子とはこうなのかと思った
 でも、いって茶寮のお値段はお手ごろだ

  店の背景がみえてきた

このお店、商品より椅子の数の方が多いんじゃないか?と思うほど椅子が並べられている
衝立の向こうに、小さな神棚がある
そこにも椅子が10近く向かい合っている

そこに座って店主の佐藤隆夫さん順子さんご夫妻に話を伺った
佐藤さんは、大阪上本町に5店舗を構えた和菓子屋の次男
ご自身は和菓子店を継承する気はなかったという


理系それも技術開発が専門の御主人は、阪大を出ると東芝に入社、機材開発の研究は今も続けている
東京で暮らしていた夫妻に転機が訪れたのは、隆夫さん30歳の時
兄を重篤な病が襲った。なんとかたすけていただきたい。

そんな中から心が決まった
親孝行をするには店を継ぐしかない
東京を引き払って和菓子店の経営に専念した

  いって講

考えてみれば、人生の岐路に立つときはいつも、教祖の教えに導かれてきた
42歳の時、店の経営は姉に任せ、開発機械技術者に戻った
その成果は、鳥翼風車発電機となって具現化した

すでに金婚式を迎えた夫婦の歩みは決して平たんではなかった
人生の岐路で、いつも指標となるのは
教祖の教えだった
いつしか、隆夫さんも熱心な信仰者となっていた

「いって講」

先代の教会長さんが講名をさずけてくれた
今の会長さんにいたるまで三代に亙って導いていただいている

  いって茶寮

14年前、本通りに和菓子店を出した
おたすけをさせてもらいたい、二人の心は一致していた
来店する方々との語らいの中で
いつしか、身上たすけ・事情たすけへとつながった
「一日一回以上はおさづけ取り次がせてもらうかなぁ」
そう話す隆夫さん
一方、順子さんも熱心に話を聞いては、時に厳しく
教祖の教えを伝える
店は幾度か難局を迎えた
幾度かは、おたすけをしたお客さんからのつながりで乗り越えたこともあった

一番人気のお菓子に抹茶チョコレートがある
おたすけをしたご婦人が、そこら中に配りあるいて
いつしか一番人気のお菓子になった

  転機となったおたすけ

 教祖130年祭の時だった
 あるご婦人が、子供の受験のために自らの命を縮めてでもと神様にお願いしてきたと話してくれた
 その方も身上がある

 「それは違う。あなたも一緒にたすかって、親子で喜ぶ。それが教祖のお望みくださることだ」
 なぜだか、そう、口に出たという

 その目標に向かっておたすけが続き、本当にその通りに御守護をいただいた

 やはり、教祖のお心は「陽気ぐらし」へ向かっている
 そんな思いが確信となった

「日々嬉しい/\通れば、理が回りて来る。なれど、こんな事では/\と言うてすれば、こんな事が回りて来る。…」
 店の右側には、そんな思いを標榜するかのように、おさしづの一節が掲げられている

 お店の中から本通りを見ると一味違った印象を味わえる
 おぢばに帰り、神殿へと向かう人が行き交う

 多くの人が、人生の岐路や節目にさいして
 教祖の教えに浴そうと帰ってこられる

 そうか
 ここはそんな人たちにとっての要衝の店になりつつあるのか
 そんな思いがした

 月次祭の帰り、椅子に座る人に床に膝をついておさづけをとりつぐ隆夫さんの姿を目にした
 「ここは落ち着くのよ」
 そう話すのは、昨日大きく腫れた手におさづけを取り次いでもらったという御婦人だ
 痛みはなくなったという

 椅子が異常におおかったのも、店の展示物が脈絡なく見えたのも、それは色んな人とのかかわりの中から出来上がってきたものだったようだ

 国際色豊かであるのも、おぢばならではなのだろう

和菓子が取り持つ陽気ぐらしへの交差点、
そこに熱心なおたすけ人夫婦がいて
道案内をしてくださるのか
そんな思いをもって店を後にした

 【いって茶尞】
  住所:天理市三島町419
  営業時間:9:00~17:00
  定休日:15日
  駐車場:なし
  座席数:10~15席
  クレジットカード:不可
  料金:季節の和菓子(お茶付)250円/かんろ糖400円~/抹茶チョコレート1,080円/梅昆布茶(18入)450円 他
  Wi-Fi 不可
  おくつろぎ「お茶のサービス」あります
  電話番号:0743-63-5658 
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