華の道

華の道

「第71回奈良県華道展覧会」が開かれた奈良県文化会館(2021年10月7日)

 華道、華の道には流派が多い、という。
 いったい、いくつの流派があるというのだろうか。
 この秋、10月中旬、奈良県文化会館を会場に、「奈良県華道会」の主催で、展覧会が催され、会場内は多くの流派の花で彩られた。
 その中に、今年で2回目の参加となる、誕生ホヤホヤの流派があった。主宰者は、西田一陽さん。お弟子さん、中尾美泉さん、福原千湟さんとともに、3人で参加した。
 西田さんがひとつの流派を率いて、この場に、今の立場でいるのは、これまで幾たびかの大節を乗り越えてのことである。

向かって左から 福原千湟さん・西田一陽さん・中尾美泉さん

 家元、西田一陽さんが、華の道を歩もうと思ったのは、今から半世紀前のこと。高校の先輩からの勧めだった。たちまちお花に魅了された一陽さんは、10代で生涯の道が定まった。
 やがて、所属の櫻井大教会でお花を生けるお役を頼まれ、そのひのきしんは今なお続けられている。こうして華の道真っ直ぐ進んできた。
 しかし、花も時に強風や嵐に遭うように、一陽さんの半生もまた、平易ではなかった。

華道を始めて間もない19歳のころ(実家の電気店にて)

 20年ほど前の年明け、教室で生徒さんを相手にお花の指導中、右わき下に痛みを感じたのが始まりだった。結果は、最悪の病。
 一陽さんは、宣告を冷静に受け取った。
 そして、「自分を一と取らず」という座右の銘を自ら発した。
 自分のことは、一番には考えない、全て、まず人から、人のことから、という意味である。この時から、これを生涯の信条と思い定めた。

 生まれ変わりを心に誓い、ひと様のお役に立つ生き方、私にできることは、「この華の道」と誓った。
 入院中もこの言葉を胸に、入院患者さんのおたすけに回った。
 6年後に再発したが、この座右の銘を心に何度も繰り返し、また実行しつつ、闘病を通して味わった不安、苦しみ、孤独感を、自分の経験値として「人だすけ」の方向にと転化していった。
 プラス思考への転化である。

西田さんの「天流華陽会」生け花教室

 いつの間にか、周囲の様子が変わり始めた。
 信仰にも華道にも反対だったご主人の心の向きが変わり、晴れてようぼくとなった。華道教室に通う人の中からも、ようぼくが誕生してきた。

布教所長でもある一陽さんの住まいの2階は、お稽古の教室と神実さんを祀り込んだ部屋とが続きになっている。結果、お花のお稽古をしつつ、自然とお道の信仰に触れるようになっている。
 目指すは、「感謝の心と笑顔があふれるお稽古場」である。

華道展会場前
華道展場内(入場者に花の説明をする西田さん)
レッドウィロー・HBユリ・ヒオウギの実・ヒペリカム・秋色アジサイ・カピラリス

 華道の流派は、多種多様、千差万別である。
 一陽さんも、三つの流派の先生方から学んで、それぞれの良きところを吸収してきた。
 ところが2年前、それらから、単身独立することになった。
 華道では、それまでの流派から「独立する」のは、なかなか難しいこと。しかしながら、所属の流派の先生方はもちろんのこと、奈良県下の先生方からの暖かい力添えもあって、円満に独立の運びとなっていった。

中尾美泉さん
野バラの実・ヒペリカム・粟・菊・ワックスフラワー

 思えばはじめて病となった時以来、すべてなって来たことに身をゆだね、ただ「自分を一と取らず」人のためという思いで生き続けてきた結果であろうか。
 そして、名付けた新しい流派の名は、「いけばな天流華陽会」 家元、西田一陽。

福原千湟さん
野バラの実・HBユリ・ヒペリカム・ワックスフラワー・ミシマサイコ

 流派の名前は、「おさしづ」からの一節。主旨は、「天然自然の流れにそって、華を陽気に生ける会」という「陽気ぐらし」の心を基本としたもの。
 そしてこれから、お道の信仰者として、華道家として、なにをしていくか。多数の流派がある華道の世界ではあるけれど、華によって、華を通して、人に喜んでいただく、明るくしていく、大きくいえば、世界平和をめざし、流派を越えた交流が必要ではないか。
 そのために、「天理華道」をめざしていきたい、と思っている。

 華道は、お道の教えをさらに広げていくために、必ずや世界に通じるにおいがけ・おたすけとなると確信する。
 教内には、師範を含め多くの華道の愛好者がいる。その方々とともに、流派を越えて交流の場を築いていきたい、それを人類の故郷であるおぢばで開きたい。
 一陽さんは、呼びかける。
 お道の華道の愛好者のみなさん、感謝の心でお花を活けて、周囲の方々に安らぎと元気、そして勇気を感じていただこうではありませんか。「天理華道」の上に、どうか多くのお力添えをいただきたい。
 それが、今の一陽さんの切なる願いである。

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人